- « 前のページ
『「がん寛解」の科学』の紹介|治療中の食事・睡眠・腸の悩みを考える

書籍紹介|浜口玲央 著

本書から考える、治療中の食事・睡眠・腸のこと。
「寛解への準備はできているか」
「治療を続けながら、毎日の食事でできることはある?」「眠りや便通、体力のことも相談したい」。がんと向き合う毎日には、治療以外にも気になることがあると思います。
今回ご紹介するのは、浜口玲央医師の『「がん寛解」の科学』です。裏表紙の「寛解への準備はできているか」という問いから、治療を受ける身体と日々の暮らしに目を向けてみましょう。
本書の中心は、がんに対する治療とともに、治療を受ける身体の状態にも目を向けよう、という考え方です。
「寛解」とは、がんの症状や兆候が減ったり、見られなくなったりした状態を指します。治癒と同じ意味ではなく、必要な治療や経過観察を続けることが大切です。
サツマ薬局が大切にしているのは、病院での治療を続けながら、その方の体調や暮らしに合う方法を一緒に考えることです。漢方や健康食品についても、服用中のお薬や治療内容を確認しながらご相談を伺います。
東洋医学と西洋医学の両方の視点を大切にする薬局として、本書の考え方をご紹介しながら、食事・睡眠・腸の調子など、日々の身体づくりを考えていきます。
1.身体づくりを考える、5つの視点
裏表紙の図には、身体の状態を考える5つの視点が並んでいます。

- 栄養・代謝:食べたものが、エネルギーや身体の材料としてどう使われるか。
- 炎症:身体の中で、炎症が長く続いていないか。
- 免疫:異物や異常な細胞に対応する仕組みが、どう働いているか。
- 自律神経:睡眠やストレス、活動と、身体の調整機能との関わり。
- エントロピー:本書では、老廃物などによる身体の負担と、その処理・排泄を考える視点。
「エントロピー」は、聞き慣れない言葉かもしれません。本来は物理学の言葉ですが、ここでは著者が身体の負担を説明するために使っています。
暮らしに置き換えると、よいものを取り入れることに加えて、便通や腎臓の働きなど、身体が不要なものを処理する仕組みにも目を向けるということです。便通や水分の取り方など、今の体調に合わせて見直すきっかけになります。
本書は、食事だけ、検査の数字だけで身体を判断せず、これらを合わせて見ようとしています。すべてを完璧にしようと気負うより、今困っていることから整理すると読み進めやすくなります。
2.本書の「9つの対処法」を、毎日の暮らしへ
第7章には9つのテーマが登場します。それぞれの意味を、薬局でのご相談にもつながる身近な言葉で整理しました。
① 食事と、栄養の使われ方を見る
本書の「代謝環境」の話です。食べ物の名前だけでなく、食事量、栄養の偏り、糖の使われ方などにも注目します。
「何を食べればよいか」と迷うときは、まず食欲や体重の変化、食べにくさをお聞かせください。食べられる量や生活に合わせて、無理なく続けられる工夫を考えましょう。
② 長く続く炎症に目を向ける
本書は、慢性的な炎症を身体の状態を考える要素として取り上げます。自分ではわからないこともあるため、気になる症状と検査結果を合わせて確認する視点です。
③ 免疫の働きを保つ
免疫は、身体を守る仕組みです。本書では、がんや治療との関わりから、その働きを考えています。
食事が取れているか、休息が足りているか、気になる体調の変化はないか。免疫を考えるときにも、身体全体の状態を見ていくことが大切です。
④ 睡眠とストレスを振り返る
自律神経は、呼吸や消化などを無意識のうちに調整しています。本書は、睡眠やストレス、活動とのつながりを取り上げます。
例えば、寝つきが悪い、夜中に目が覚める、気持ちが休まらない。そんな変化も、相談してよいことです。
⑤ できる範囲で身体を動かす
本書は、身体活動を保つことにも注目しています。運動の内容や量は、その日の体力や症状によって変わります。
散歩や家の中での活動など、無理なく続けられることを、治療の状況に合わせて考えます。
⑥ 食事と便通から、腸の状態を見る
野菜、豆類、きのこ、海藻、果物など、いろいろな食品から食物繊維を取ることが紹介されています(本書257〜259頁)。
腸内細菌は、食物繊維などを利用して「短鎖脂肪酸」という物質を作ります。腸の細胞のエネルギー源になり、腸の内側を守る働きなどにも関わる物質です。
また、味噌、納豆、漬物、豆乳などを使ったヨーグルトといった発酵食品も登場します。
食物繊維の量や取り方は、おなかの状態に合わせましょう。特に手術後や腸の狭窄・閉塞、強い下痢がある場合は、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。
大切なのは、一つの食品だけに頼ることより、食べられるものの幅と、おなかの調子を見ること。便の硬さ、出る回数、おなかの張りなども、身体からの情報になります。
⑦ 身体の負担と、排泄に目を向ける
ここが「エントロピー」とつながる部分です。本書は、身体の中で生まれる老廃物や、外から入る物質を取り上げています。
そして、排便・排尿・発汗・呼吸という4つの経路に注目します。
日常では、便秘や下痢が続いていないか、尿の状態に変化はないか、睡眠不足や過度の飲酒が続いていないか。そうしたことを振り返る入り口になります。水分や運動についても、身体の状態に合った方法を考えます。
⑧ 日々の記録を役立てる
食事、睡眠、歩いた時間、便通、体調。簡単なメモでも、変化を伝える助けになります。
本書は、日常の記録に加え、腕時計型の機器やAIの活用も取り上げています。難しい機器をそろえる前に、気になることを短く書き留めるところから始められます。
⑨ 標準治療を十分に生かす
9つの最後は、科学的な根拠にもとづいて行う「標準治療」を生かすことです。
病院での治療と、日々の身体づくりを一緒に考える。サツマ薬局も、治療を続ける方の食事や生活、漢方のご相談を大切にしています。
9つのうち、今気になったのはどの項目でしょうか。「最近眠りにくい」「食事量が減った」など、一つの困りごとから相談を始められます。
3.検査は「今の身体を知る手がかり」
本書では、身体の状態を評価する方法として、7種類の検査を紹介しています。
| 検査 | 何を見るか |
|---|---|
| 血液検査 | 栄養状態や炎症など、複数の項目を確認する。 |
| 尿検査 | 尿の性質や、身体から排出される成分を見る。 |
| 栄養解析 | ビタミンやミネラルなどを調べる。 |
| 腸内環境検査 | 腸内細菌の構成などを調べる。本書では食物に対するIgG抗体の検査も、この項目に含めています。 |
| 尿中有機酸検査 | 尿に含まれる物質から、栄養が使われる過程などを検討する。 |
| 有害毒素検査 | 重金属や環境中の化学物質などを調べる。 |
| SNPs検査 | 遺伝情報の小さな違いから、体質の特徴を考える。 |
検査はすべてを受けるのではなく、何を知りたいかに合わせて医師と相談して選びます。表は本書の紹介であり、検査ごとに医学的な位置づけは異なります。食物IgG抗体検査は、食物アレルギーの診断には推奨されていません。結果だけで食品を避けず、必要な栄養を保つことも大切です。
4.和田洋巳医師の「土壌」の考え方とつながる
和田洋巳(わだ・ひろみ)医師の『がん劇的寛解』には、がんを作り出した「土壌」を改良するという節見出しがあります。
がん細胞だけでなく、それを取り巻く身体の状態にも目を向ける表現です。浜口医師の本は、この考え方を、食事、炎症、免疫、睡眠、腸、検査、日々の記録へと広げて整理しています。
両書を読み比べるなら、和田医師の本の食事についての説明と、浜口医師の本の「身体をどう調べ、何を記録するか」を見てみると、それぞれの特徴がわかりやすくなります。
食事の考え方を暮らしに取り入れる際は、体重や栄養状態を保つことを大切にしましょう。両書に登場するアルカリ化食については、がんへの治療効果は確立していません。食べられるものを極端に制限せず、その方の状態に合わせて考えます。
5.生活とがんの関係は、研究でも調べられている
本の考え方に加え、実際の研究も二つ見てみます。
身体活動について
2025年には、手術と術後の抗がん剤治療を終えた結腸がんの患者889人を対象に、運動プログラムの効果を比べた研究が発表されました。
5年後まで再発・新たながん・死亡が起きなかった割合は、運動プログラムを受けた人で80.3%、健康情報の資料を受け取った人で73.9%でした。
対象は、手術と術後治療を終えた結腸がんの患者さんです。運動中の筋肉や関節のトラブルにも配慮しながら、体力や治療の段階に合わせた支援を受けて取り組むことが大切です。
食物繊維について
免疫療法を受けるメラノーマという皮膚がんの患者128人を調べた研究では、食物繊維の摂取量が多いことと、良好な経過との関連が報告されました。
この研究は食生活と経過の「関連」を調べたもので、食物繊維や特定の商品による治療効果を確かめた試験ではありません。日々の食事に目を向けるきっかけとして、ご自身のおなかの状態に合う取り方を考えてみましょう。
6.浜口医師・和田医師の研究と、白豆杉のこと
浜口玲央医師と京都大学名誉教授・和田洋巳氏は、天然物をがん治療にどう位置づけるかという研究にも関わっています。両氏が共著者となった2024年の総説では、紅豆杉関連の植物 Taxus yunnanensis などを取り上げ、標準治療と組み合わせる可能性を検討しています。臨床での活用に向けた検証が続けられている分野です。
また、浜口医師が共著者の2022年の論文は、Taxus yunnanensis の木部抽出物を細胞とマウスで調べた基礎研究です。細胞や動物での研究は、素材の働きを探る段階にあたり、人での治療効果は今後の検証が必要です。
白豆杉と紅豆杉は、同じイチイ科の近い仲間です。紅豆杉の研究を背景に、現在は白豆杉の研究も進められています。タキサスやチエニーも、関連する名称です。
サツマ薬局では、こうした研究の背景も踏まえながら、白豆杉についてのご相談をお受けしています。研究に使われた植物・成分と商品には違いがあるため、商品選びでは現在の治療やお薬との組み合わせも確認します。白豆杉について詳しく知りたい方は、当薬局の白豆杉のご案内をご覧ください。
これから本を読む方へ
本書は全7章です。「がんの基礎」「治療で経過が違う理由」「経過がよかった人の共通点」から始まり、「身体を見る5つの視点」「7つの検査」「日常の記録とAI」「9つの対処法」へと進みます。
冒頭には、がんの部位別の割合や生存率、薬の特徴を整理した図表もあります。生存率の図は2009〜2011年に診断された人の統計なので、現在の一人ひとりの見通しとは分けて読む必要があります。
公開レビューには、図書館で読んだ後に購入してじっくり読みたいという感想や、和田医師の本との違いを知りたいという声がありました。気になる章から少しずつ読み、ご自身の暮らしを振り返る一冊としてもよいと思います。
初めてなら、裏表紙の図から全体をつかみ、第7章で気になる項目を読む。その後、第5章の検査や第6章の記録に戻る。こんな読み方もできます。
サツマ薬局のがん相談・健康相談をご利用ください
がんと漢方のご相談がん治療中の体調や、漢方のこと。気になることをお聞かせください。
専門相談員が、お話を伺います。相談方法を見る
「食欲が落ちてきた」「眠りが浅い」「便通が気になる」「今のお薬と漢方や健康食品を一緒に使えるか知りたい」。そんな日々のお悩みを、サツマ薬局へお聞かせください。専門相談員が、今のお困りごとからお話を伺います。
ご相談で一緒に確認できること
- 食欲、睡眠、便通など、今気になっている身体の状態や生活習慣。
- 服用中のお薬と、漢方・健康食品についてのお悩み。
お話を伺いながら、食事や生活の工夫、漢方・健康食品の選び方を一緒に考えます。服用中のお薬との飲み合わせも、ご相談ください。購入を決める前のご相談もお気軽にどうぞ。
ご相談の際は、お薬手帳と、使用中の漢方・健康食品の商品名をご用意いただくと、具体的に確認しやすくなります。病院での治療を大切にし、治療やお薬の変更は主治医と相談しながら進めましょう。
お電話で話したい方
0120-159-900
受付:9:00〜18:00(日曜・祝日を除く)
「ブログを読んで、がん相談をしたい」「健康のことで相談したい」とお伝えください。相談対応中は、折り返しのお電話になる場合があります。
文章で相談したい方
友だち追加後、お名前・お電話番号・相談したいことをお送りください。メッセージはいつでも送れますが、返信にはお時間をいただく場合があります。
本の紹介・参考資料
この記事は、本書の裏表紙、図表1-1〜1-4・5-1、257〜261頁、公式試し読みの目次、公開抜粋をもとにまとめました。生活上の例と関連研究は、理解を助けるために補っています。
本と読者レビュー
- 浜口玲央『「がん寛解」の科学 この体内環境で予防・治療・再発防止する』角川新書、2026年刊:出版社の本紹介/公式試し読み
- 和田洋巳『がん劇的寛解 アルカリ化食でがんを抑える』角川新書、2022年刊:出版社の本紹介・目次。「土壌」の引用は第6章の節見出し。
- 著者による公開抜粋
- 楽天ブックスのレビュー(購入者さん、2026年10月27日)/紀伊國屋書店の読書メーター連携欄(yoripさん、2026年8月10日)。確認日:2026年11月4日。
研究・公的な情報
- 米国国立がん研究所:寛解の意味
- 結腸がんと運動の研究・2025年
- 食物繊維とメラノーマ免疫療法の研究・2021年
- 日本小児アレルギー学会:食物IgG抗体検査について
- 米国国立がん研究所:アルカリ化食について
- 『がんの統計2025』
- 紅豆杉の症例を含む学会要旨・2017年/細胞・マウスでの研究・2022年/天然物に関する論文・2024年
- 岐阜大学:白豆杉共同研究部門/研究対象の植物・研究内容
- 製造元:白豆杉と紅豆杉の説明
商品・ご相談
- サツマ薬局の統合医療に関する方針
- サツマ薬局の相談内容と利用方法/購入前の相談について
よく読まれている記事
- « 前のページ












